本研究は、申請者が単離したLeishmania amazonensisの2つのP-糖タンパク質遺伝子(LaMDR1およびLaMDR2)について、リーシュマニアの薬剤耐性ならびに寄生適応におけるそれぞれの遺伝子の役割を明らかにすることを目的として行われた。昨年度の研究により、LaMDR1遺伝子を導入したリーシュマニアの野生株ではビンブラスチンに耐性を獲得し、LaMDR2遺伝子を導入した場合は5-fluorouracil(5-FU)に耐性を示すことが明らかとなった。そこで今年度は、^3Hでラベルしたこれらの薬剤のリーシュマニア細胞内蓄積について検討した。その結果、^3H-ビンブラスチンは、時間的経過にともなって細胞内に蓄積したが、LaMDR1遺伝子導入株では対照株に比べてその蓄積量が多い傾向が見られた。しかし、その差は著しいものではなくさらに検討する必要がある。一方、^3H-5-FUの細胞内蓄積量は、対照株では時間経過にともなって増加したが、LaMDR2遺伝子導入株では対照株に比べて薬剤暴露後30分までは増加したがその後は逆に減少し、120分後では対照株の20-30%にまで低下した。この現象は、LaMDR2タンパクが細胞内小胞の膜に存在して5-FUを一時的に小胞内に蓄積・隔離し、そののちエキンサイトーシスによって細胞外に排泄するモデルを考えることで説明することができる。そこで、LaMDR2タンパクに対するペプチド抗体を作製し、その細胞内局在について検討を行っているが、いまのところ結論的な結果は得られておらず、さらなる検討が必要である。また、LaMDR1およびLaMDR2遺伝子の欠損株の作製にも着手したが、技術的問題からいまだ成功には至っておらず、今後の課題として残された。
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