赤痢アメーバのシスト形成のモデルとして重要なEntamoeba invadensの無菌シスト形成系を用い以下の実験を行った。1.シスト形成に伴うシスト特異的蛋白質の発現:栄養型からシストへの変化に伴う虫体蛋白の変動をSDS-ゲル電気泳動(SDS-PAGE)及びイムノブロッテイングにより調べた。SDS-PAGEにより比較した両者のバンドパターンはほぼ同様であったが、PAS染色によりシストに特異的な250kDaと88kDaの糖蛋白が検出された。抗栄養型抗体により多くのシスト蛋白も免疫染色された。一方、栄養型蛋白で吸収した抗シスト抗体により培養1日目のシストの88kDa蛋白が最も強く染色され、その反応性は2日目以降弱くなった。この88kDaの局在を調べたところ、不溶性分画に存在しシスト壁との関連が示唆された。2.シスト形成におけるアクチンミクロフィラメントの関与:アクチンの重合阻害剤であるサイトカラシンDのシスト形成に及ぼす効果について調べた。その結果、サイトカラシンDは栄養型の増殖を抑制するとともにシスト形成をも抑制した。サイトカラシンD存在下で培養した栄養型は多核になり3核以上の核を持つ虫体は71%に達した。また、多核になった栄養型は多核のシストを形成した。サイトカラシンDで処理した栄養型のシスト形成は無処理の栄養型に比し、サイトカラシンD存在下ではより抑制され、非存在下では形成率が低かった。これらの結果から、サイトカラシンDによる栄養型の多核化はシスト形成に抑制的に作用することが明らかになった。
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