研究概要 |
日本住血吸虫虫卵に対する肉芽腫形成および感染防御におけるIL-18の機能解析を行う目的で,IL-18ノックアウト(KO)マウスを用いて検討した.肉芽腫形成は主に実験的に虫体産出虫卵を肝臓内に移入して検討した.感染防御はセルカリアを30隻リング法により経皮的に感染させ,感染後7,10週に剖検して調べた.KOマウスのサイトカイン産生の特性は虫卵抗原(SSEA),虫体抗原(SWAP)刺激の脾細胞上清或は血清を用いてELISAにより検討した.これらの成績は野生型のC57BL/6やIL-4KO,IFN-γKOマウスのそれと比較検討した. 1.サイトカイン産生の特徴;住血吸虫感染ではIL-18の産生および他のサイトカインに対するIL-18の調節は今まで分っていない.脾細胞刺激によるIL-18産生は低値であるので省略するが,血清ではIL-18KO,IFNgKOでは認めず,B6,IL-4KOで有意に高い(50pg/ml)レベルのIL-18産生を認めた.IL-18KOマウスにおけるサイトカイン産生の特徴はTh2サイトカイン(IL-4,IL-5,IL-13)が増加することである.これに対し,KOマウスにおけるIFNg産生は減少する傾向を認めた.以上の結果は住血吸虫感染で初めてIL-18産生があることを認め,その産生は他のサイトカイン産生に重要な影響を与えていることを示している.2.実験的肉芽腫形成;IL-18KOマウスの肉芽腫サイズは他のマウス(B6,IL-4KO,IFNgKO)と明らかに異る.特に注入後4週では有意に大きい肉芽腫形成を来した.この結果はサイトカイン分析結果が示すとおりにTh2レスポンスの増加に原因すると考えられる.尚,IL-18KOとIFNgKOマウス間で肉芽腫形成が異ることは後者ではTh2応答,特にIL-4,IL-13の明かな増加が見られないことと一致する.3.感染防御とサイトカイン;4種マウス間で比較した結果,IL-18KOで有意な虫体数の減少を認めた.
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