研究概要 |
EPEC(腸管病原性大腸菌)の付着因子Bundle-forming pili(BFP)およびInti minの発現はプラスミド上にコードされる転写調節囚子BfpT,V,Wによって正に調節されており、本調節遺伝子が同時に多数の病原性遺伝子の発現を調節している可能性が示唆されている。そこで未知の病原性遺伝子を探索することを目的に、DNA結合能のあるBfpTを精製し、これに特異的に結合するプロモーターDNA断片をEPECより分離した。さらに選択されたプロモーターの中から転写活性がbfpTVW遺伝子の存在により影響されるものを選別した。その結果、bfpTに調節されるプロモーター(遺伝子)が多数分離され、それらは正あるいは負に調節されるものに分類された。塩基配列を検討した結果、正に調節されているプロモーターのひとつは新規の遺伝子であり、非病原性大腸菌E.coli K12株には存在していなかった。さらにEPEC染色体上の当該プロモーターを含むEPEC特異領域は約4.9kbであること、少なくとも4つのORF(ORF1-4)を含むことを見い出した。当該プロモーター下流のORF(ORF1)には約20kD蛋白質がコードされ、赤痢菌細胞侵入性導伝子群の一つIpgB蛋白質と相同性を示した。orf1遺伝子の挿入変異株は培養細胞への付着能が低下し、BFPの発現が低下していた。精製したORF1蛋白質はBfpA蛋白質と値接結合すること、およびE.coliK12株においてorf1遺伝子と共存することによりBfpAの産生量が増加することからorf1はシャペロン様の蛋白質をコードしていることが示唆され、evcA(EPEC virulence specific chaperone-like protein)と名付けた。
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