研究概要 |
Escherichia coli O9a株のO多糖合成遺伝子領域に存在するマンノース転移酵素遺伝子(wbdA)は、その塩基配列から、二つの独立した遺伝子が遺伝子融合を起こして構築されたものである可能性が示唆されていた。そこで、分子遺伝学的手法により、E.coli O9a株のwbdA遺伝子をそれぞれのドメインに分離し、各ドメインの多糖合成能を明らかにした(Kido et al.,Mol.Microbiol.1998,27:1213-1221)。その結果、N末端側ドメインのみでO多糖が合成され、その化学構造が09a多糖構造の一部であることから、この新しく合成されたO多糖がE.coli O9a株の祖先型多糖であることが推測された。また、この菌の多糖合成遺伝子の塩基配列は、類似した構造のO多糖を合成するE.coli O9株の多糖合成遺伝子よりも、Klebsiella属のそれとより高い相同性を示したため、遺伝子の由来がKlebsiella属である可能性が示唆された(Sugiyama et al.,J.Bacteriol.1998,180:2775〜2778)。現在までに明らかになったE.coli O9多糖合成のメカニズムやその遺伝的背景をまとめて発表した(N.Kido,Prog.Clin.Biol.Res.1998,397:15-22)。さらに、E.coliO9aによく似た構造のO多糖を合成するE.coliO9株、KlebsiellaO3株のwbdA遺伝子をクローニングし、その塩基配列の決定を行った。これらの遺伝子構造の比較から、wbdA遺伝子のN末側ドメインにあるいくつかの点変異が、E.coli O9とO9aの構造の違いに関与していることが推定されたので、現在これらの遺伝子に点変異を導入することにより、多糖構造の変化に直接関わる変異を同定している。
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