研究概要 |
申請者のこれまでの検討で,(1)抗酸菌[M.avium complex(MAC)]感染症では,サプレッサーMΦが感染2〜4週後にTNF-aやIFN-γなどの働きを介して誘導される,(2)このサプレッサーMΦはPKCとCa^<2+>イオノフォアで誘導されるT細胞の活性化を抑制する,(3)サプレッサーMΦはRNIや脂肪酸などをエフェクターとしているが,その作用発現には標的細胞への結合が必要であり,その際にはMΦ側のB_<7-1>分子が重要な役割を演じている,ことなどが明らかになっている.本年度の抗CD28,抗CTI,A-4抗体,CTLA-4 Igを用いての詳細な検討により,サプレッサーMΦのB_<7-1>分子に対する標的T細胞の側のレセプターはCD28やCTLA-4以外の分子であることが確かめられた.さらにELISA法を用いての実験で抗酸菌感染誘導サプレッサーMφではB_<7-1>分子の発現増強がみられること,ならびにサプレッサーMΦの標的T細胞への結合は実際に抗B_<7-1>抗体処理でブロックされることが証明された.また,サプレッサーMΦの活性発現には内因性のTNF-aのみならず標的T細胞により産生されるIFN-γも重要な役割を演じており,MφをCaM kinase II阻害剤で処理した場合にはサプレッサー活性発現は部分的に阻害されるが,これらの現象との関連でMAC感染MΦでの諸種サイトカイン(CK)発現動態についてみたところ,感染早期での炎症性CK(TNF-a,IL-Iα,IL-12)のみならず抗炎症性CK(IL-10,TGF-β)のmRNA発現の誘導が認められたが,その後の検討で内因性IL-10,TGF-βによるMAC菌殺菌能などのMφ細胞機能のdown-regulationは有意なものではないことが示され,これら抗炎症性CKのサプレッサーMΦの機能発現への関わりはTGF-βの標的T細胞への直接の作用を除いては否定的であることが分かった.現在,B_<7-1>遺伝子を組み込んだベクター系を用いての大腸菌でのB_<7-1>分子の発現実験が進行中であり,大量精製したB_<7-1>蛋白を用いての標的T細上のCD28,CTLA-4以外のB_<7-1>結合蛋白の検索を進めつつある.
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