研究概要 |
前年度までの検討では,(1)M.avium complex(MAC)感染症で誘導されるサプレッサーマクロファージ(MAC-MΦ)のB7-1分子に対する標的T細胞の側のレセプターはCD28やCTLA-4以外の分子であること,(2)MAC-MΦではB7-1発現増強がみられ,MAC-MΦの標的T細胞への結合は抗B7-1抗体処理でブロックされること,(3)MAC-MΦからの細胞間接触を介しての抑制性シグナルはT細胞のConAレセプターからPKCに至るシグナル伝達系の何れかのステップに作用を及ぼしていることなどが明らかになっている.本年度は主にMAC-MΦのB7-1分子と標的T細胞の細胞膜蛋白質との相互作用と,MAC-MΦの抑制性シグナルの標的T細胞のシグナル伝達系とのcross-talkの様相に関する検討を進めた.その結果,(1)MAC-MΦの抑制性シグナルのT細胞への伝達はB7-1分子をCTLA-4Igでブロックすることによっては阻害されず,MAC-MΦの抑制性シグナル伝達にかかわるB7-1分子は既知のものとは別のisoformに属す可能性があること,(2)マウスB7-1蛋白の遺伝子を大腸菌で発現させて調製したrecombinant B7-1蛋白を用いての検討により,T細胞のlysate中にB7-1との特異的結合能を有する31kD蛋白が検出されたが,このものはその分子量から考えて,CTLA-4と並ぶ新たな抑制性シグナルのレセプターとして最近発見されたPD-1に相当するものと考えられること,(3)マウス脾細胞にもPD-1分子発現が認められるが,ConA刺激に応答してその発現がup-regulateされること,(4)MAC-MΦとの混合培養により抑制性シグナルを受け取った脾T細胞では,ConA刺激に応答してのprotein kinase Cの活性化と細胞膜へのtranslocationが抑制されること,(5)MAC-MΦのサプレッサー活性発現はindolamine 2,3-dioxygenaseの阻害剤であるmethyl tryptophanでは抑制されないことから,T細胞におけるtryptophanの枯渇に起因したものではないこと,などが明らかになった.現在,recombinant PD-1を調製し,PD-1とMAC-MΦの側のリガンドであるB7-H1との相互作用に関する検討を進めつつある.
|