Vibrio vulnificusは病原因子として分泌性の金属プロテアーゼ(VVP)を産生し、本菌感染症の特徴である出血性皮膚病変を引き起こす。つまり、VVPは皮膚上皮組織の基底膜構造を破壊して出血を起こす。しかし、基底膜破壊から出血にいたる過程の詳細については不明な点も多い。 本年度は、まずマトリゲルを用いた再構成基底膜にVVPを作用させ、免疫学的手法を用いて基底膜構成タンパク質個々の分解量の測定とと分解産物の検討を行った。その結果、VVPは基底膜構成主要タンパク質であるコラーゲンタイプIVを特異的に分解しており、VVPはラミニン等のほかの基底膜構成タンパク質にはタンパク分解作用を示さないことが明らかになった。しかしながら、基底膜の分解だけでは出血を引き起こす事か説明できなく、血管の障害がVVP処理により引き起こされている可能性も示唆された。そこで、VVP投与皮膚組織の病理標本を作成して光学顕微鏡レベル観察を加えたところ、結合組織中毛細血管の皮膚組織基底膜に近い部位における著しい出血像が観察された。しかし、毛細血管の基底膜におけるVVPの作用については明確な成績は得られなかった。電子顕微鏡レベルでの観察では出血部位を的確に補足することが困難で現在のところ成功していない。したがって、毛細血管障害の詳細は未だ明らかにできていないが、光学顕微鏡レベルでの観察では血管内皮細胞自体の障害の可能が強く示唆された。今後は血管内皮細胞の培養系を用いてVVPの細胞障害作用の詳細にも検討を加えていきたい。
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