研究概要 |
ウェルシュ菌ホスホリパーゼC遺伝子(plc)のプロモーター上流の3つのphased-A-tractsは折れ曲がり(ベント)構造を形成し、低温依存的に転写活性を促進する。我々はこの領域をUAS「upstream activation sequence」と命名した。そして、UASがRNAポリメラーゼ(RNAP)との接触を強めることを示した。(Katayama,S.et al.1999.EMBO J.18(12):3442-3450.)さらに3つのphased-A-tractsがRNAPのどの部位と結合するのかを明らかにすることはUASとRNAPとの相互作用による転写促進の分子機構を明確にするために重要である。平成10年度の研究と大腸菌RNAPに関する知見から、UASはRNAPαサブユニットと結合する可能性が高いと考えられる。これを証明するために、平成11年度は以下のように研究を進め、成果を得た。 まずウェルシュ菌RNAPαサブユニットの遺伝子(rpoA)を含む領域1.6kbをPCRで増幅し、その全塩基配列を決定した。このrpoA遺伝子の塩基配列から予測されたN末端のアミノ酸配列は、精製したウェルシュ菌RNAPαサブユニットの配列(25残基)と一致した。rpoAのcoding regionをpET11aに挿入後、大腸菌BL21(DE3)pLysS株で発現させ、αサブユニット(α-WT,315aa)を精製した。同様の方法でαサブユニットのN末端ドメイン(α-NTD,228aa)、C末端ドメイン(α-CTD,79aa)をそれぞれ精製した。 3つのphased-A-tractsとplcプロモーターを持つDNA断片(3Ap)と精製α-WT、α-NTD、α-CTDを25℃で15分間共存させ、gel retardation assayを行った。α-WTとα-CTDは3Apに結合したが、α-NTDは結合できなかった。この結果から、UASにRNAPのα-CTDが結合する可能性が示された。現在、3Apとα-WT、α-CTDの接触領域を明確にするため、申請書の研究計画に従って、ヒドロキシルラジカルフットプリンティングを用いた解析を進めている。
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