研究概要 |
1.pp65/plastin各イソフォームのcDNA,遺伝子組み替え型タンパク質および高親和性抗体の作製:マウスT-plastin遺伝子をクローニングした。 2.感染に関して:我々は,グラム陰性菌のLPS刺激でマクロファージ内で強くリン酸化されるpp65/L-plastinを同定し,リン酸化部位(serine-5)を決定したが,最近,この部位のリン酸化がintegrin/Mac-1を介した細胞接着を制御していることが明らかにされた(Jones,S.L.,PNAS,1998)。サルモネラ菌感染に対する防御態勢におけるpp65-Mac-1系の重要性について報告する。C3H/HeNマウスにS.typhimuriumLT2Aをi.p.接種すると感染4日頃から著明な脾腫(重量で正常脾の2-3倍)が認められた。aminoguanidine投与によって脾腫が抑制されると,マウスはより早期に全身性感染に移行し感染死したことから,脾腫は感染防御的反応と考えられた。細胞分画は,CD3+:Ig+CD11b+=正常脾(27%:43%:4%),感染脾(14%:21%:50%)で,総数ではT,B細胞数には変化がないが,Mac-1+細胞は25倍に増加した。感染脾臓中でpp65,IL-1,TNFは増加していた。脾臓中の菌の出現は脾腫に先行したので,菌が脾臓に移動・増殖し,そこにMac-1+細胞が流入・定着することが脾腫の主因と考えられた。in vitroでLPS刺激すると,Mac-1+細胞中でserine-5を含む合成基質に対するリン酸化酵素活性が上昇すると共に,細胞の接着性が亢進した。Mac-1欠損マウスが感染死し易いこと(Rosenkranz,A.R.,J.Immunol.,1998)からもpp65-Mac-1系の感染防御での重要な役割が強く示唆された。一方,感染脾臓をTUNEL染色すると浸潤細胞の一部にアポトーシスが観察された。これは病原性サルモネラ菌のtype III分泌蛋白によるものと推定され,菌が宿主防御のバリアーを破ろうとする所見ではないかと考えられる。
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