通常、コレラは下痢を主訴とする腸管内に限局した感染症であるが、易感染宿主においては腸管から他臓器に進展し、最終的に敗血症、多臓器不全に至る症例が最近多く報告されれいる。このコレラ菌の組織内侵入機構に関して、血管透過性亢進作用、マトリックス蛋白消化酵素活性化作用などを有し、病態の増悪因子として機能するメタロプロテアーゼが関与している可能性が考えらる。この点を明らかにするために、コレラ菌によるマウス敗血症モデルの開発を試み、メタロプロテアーゼの組織内侵入への関与について検討し、以下の結果が得られた。 (1)コレラ菌プロテアーゼの精製法の改良。 (2)コレラ菌産生のメタロプロテアーゼのECLを用いた測定系の作成。 (3)コレラ菌プロテアーゼのコレラ毒素の切断部位に関する検討 (4)Vibrio cholerae non-01を用いたマウス敗血症モデルの方法論が確立。 (5)上記モデルにおいてメタロプロテアーゼ阻害剤で敗血症発症率が抑制されることからプロテアーゼの敗血症発症への関与が示唆された。 (6)敗血症発症の際、誘導型NO合成酵素の関与について誘導型NO合成酵素遺伝子が欠損したC57/BL6マウスを用いて解析した結果、誘導型NOが、少なくとも発症に関しては防御的に働いている可能性が示唆された。
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