研究概要 |
ヒトG-CSF遺伝子導入動物を用いて、H.pyloriの感染実験を行い、血掖を用いた活性酸素放出の検討、臓器組織からのH.pyloriの回収の検討、組織学的な病変の検索について行った。 H.pylori SS1株は豪州のDr.Leeから提供を受けた。感染実験には10^9/mouseの濃度でG-CSF(Tg)マウスおよびG-CSF TgのLitter mateに経口接種をした。感染7日目と14日目にマウスを殺処分し、血液と胃を含む各種臓器を採取した。 血液を用いたケミルミネッセンス反応は、本補助金で購入したMini Lumat LB9506を用いて検討した。H.pylori感染G-CSF TgマウスはH.pylori刺激に対して、極めて高い活性酸素放出をした。その反応の高さは、対照に用いたチモーザン刺激に比較して数倍強い反応であった。一方、G-CSF遺伝子を導入されていないLitter mateでは、H.pyloriによる刺激もチモーザンによる刺激もG-CSF Tgマウスよりも著名に低かった。この結果は、本マウスを使用することでH.Pylori感染状態を強調して観察できることを示した。 感染マウスの胃および唾掖中のH.pyloriの培養では、G-CSF TgおよびLitter mateで高率に菌が回収された。一方、唾液を使用した今回の実験では口腔内からのH.pyloriの回収は認められず、感染経路としての唾液については、感染初期では認められないことが分かった。組織学的には、胃の粘膜上皮にH.pylori感染に特有な空砲形成がみられ、粘液中にはH.pyloriが観察された。 今後の展望としては、胃内細菌叢をより詳細に検討することと、IL8,IL6,G-CSFなどを定量する事で、感染個体における防御系の動態を検討する計画である。さらに感染期間を延長して慢性胃炎をつくりだし、その病態を検討する計画もある。
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