科学研究費補助金に関して、下記の研究を行い成果を得た。 1.無菌マウスへの各種細菌の定着と血液性状: マウスへのHelicobacter pyloriの定着が正常細菌叢によって干渉されることから、あらかじめ胃をはじめとする臓器への各種細菌の定着について無菌マウス動物を用いて検討した。消化管由来の11菌種を無菌動物に投与したところ、全ての菌が胃を含む消化管に定着した。しかし、消化管の部位によって定着しやすい菌種としにくい菌種があった。H.pyloriは下部消化管では検出されたが、唾液中からは検出されなかった。 2.TG動物を用いた感染実験: マウス胃内に定着可能であることが分かっているH.pyloriシドニー株(SS1)をG-CSFトランスジェニックマウス(TGマウス)に投与し、菌の定着および炎症の惹起について検討した。SS1株はTGマウスおよび対照マウス共に定着したが、TGマウスではおよそ10週間で胃内の菌数が激減した。また、胃の炎症のレベルはTGマウスでは投与後2週で上皮の変性や炎症細胞の浸潤が顕著に出現した。 3.その他、関連研究として、下記の研究成果を得た。 H.pylori由来のリポ多糖による好中球と内皮細胞への影響を検討し、サイトカイン産生の誘導能を明らかにし、炎症の発現に関与することを示した。H.pyloriの病原因子の一つと考えられるVac1遺伝子型と病原性の関係を検討し、特定の型と病気の型の間に関係が深いことを示した。血清および胃粘液中のIgAレベルと胃粘膜の炎症レベルの相関を検討し、胃炎の程度とIgAレベルの関係を明らかにした。新しい抗潰瘍剤であるレバミピドがH.pyloriによる上皮細胞への付着を阻害することを示した。
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