研究概要 |
緑膿菌感染症の問題はこれからの高齢化社会において、ますます重要になると考えれらる。現在、緑膿菌の肺感染に対して有効なワクチンは開発されていない。緑膿菌ワクチンの抗原としていくつかの候補があげられている。しかし、単独に抗原タンパク質による免疫では十分な感染防御免疫が得られていない。そこで我々は、細胞性免疫の上昇が期待でき、しかも、様々な抗原を混合して用いることが可能な抗原遺伝子の発現プラスミドを直接生体に投与し、免疫する新しい方法の開発をめざした。まず緑膿菌の鞭毛抗原遺伝子を動物細胞で発現するようにサイトメガロウイルスのプロモーターを接続し、動物細胞での発現プラスミドを作製し、このDNAを直接生体に投与し、免疫する方法について検討を行った。 (Jun Fukusima, et al., Cellula Microbiology. 発表予定)。この方法で免疫すると、鞭毛抗原特異的な抗体が産生され、また、抗原特異的な細胞性免疫の活性が検出された。免疫したマウスの感染実験を行い免疫の効果を検討したところ、鞭毛抗原遺伝子によるDNAワクチンは感染防御能を増強させる可能性が確認された。そこで次に、細部性免疫に対してアジュバンド効果のあるものについて、様々な検討を行い、CpG配列を多く含み、最も効果が期待されたIL-2の発現プラスミドの同時投与による影響について検討を行った。またこの際、新たな線毛抗原遺伝子発現プラスミドの構築を行った。その結果、まず、線毛抗原遺伝子発現プラスミドは鞭毛抗原遺伝子発現プラスミドより抗原性が強いこと、また、IL-2の発現プラスミドは、抗体産生にはほとんど影響を与えずに、細胞性免疫のみを増強させうることが確認され、予防効果のあるワクチンの構成要素として利用できる可能性が強く示唆された。今後はさらに抗原を増やし、感染防御効果があるかどうかを検討する必要がある。
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