研究概要 |
種々の動物の体液,細胞に含まれるリゾチーム,デイフェンシンファミリー,CAP18などは感染に対する非特異的防御機構(Innate immunity)に重要な役割を演じている。CAP18は我々がウサギおよびヒト好中球から発見した18kDaの抗菌蛋白であり,かつ,エンドトキシン(LPS)中和活性をもつユニークな物質である。最終年度の研究成果を以下に記載する。 1.CAP18由来の27〜37残基ペプチドはE.coliO157,サルモネラ,緑膿菌などのグラム陰性菌およびMRSAなどのグラム陽性菌に対しても幅広い殺菌活性を示した。デイフェンシンの殺菌活性は150mM-NaCl存在下で消失するが,CAP18はNaCl抵抗性を示し,かつ,同条件下でデイフェンシンとCAP18に相乗作用がみられた。細胞外での殺菌に両者が協同で作用していることが示唆された。大腸菌を用いた実験で,ペプチドは外膜および内膜を障害することが認められた。 2.院内感染で問題となでいるセラチア菌に対する殺菌作用は一般の腸内細菌に対するものより弱かったが,ポリミキシン耐性菌に対しても同程度の殺菌作用を示した。 3.CAP18はin vitroおよびin vivoにおいてさまざまの種類のLPSを中和した。LPS投与によるショック死を防御し,また,緑膿菌感染マウスにおいて抗生剤で誘発されたエンドトキシンショックをも防御した。 4.アミノ酸の修飾または置換により,安定性と活性が高い数種類のペプチドを得ることに成功した。アミノ酸置換体などの合成ペプチドを用いた実験から,ペプチドのα-へリックス構造がLPSのリピドA部分との結合に関与することが示唆された。 CAP18の生体防御因子としての意義がさらに強調され,また,難治性感染症やエンドトキシンショックの治療薬,さらにLPS吸着剤としての応用などの可能性が開けた
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