研究概要 |
1. ベロ毒素はヒト好中球を活性化するか? 好中球の活性化が腸管出血性大腸菌感染症による溶血性尿毒症症候群(HUS)の発症や進展に関与していることが示唆されたので、1)べロ毒素による好中球活性化の可能性についてフローサイトメーターを用いて、ヒト血液の顆粒球画分におけるサイトカイン産生、接着分子の発現について検討した。その結果、(1)健康成人のヘパリン加血液に、リコンビナントVT1またはLPSを加えた37℃で4時間培養し、サイトカイン産生、接着分子発現をフローサイトメーター(FACSCalibur、Becton Dickinson)を用いて検討した。その結果、VTl(1-20μg/ml)は顆粒球画分と単球両分でのCD11bまたはCD18の発現をLPS(0.01-1μg/ml)と同時に促進した。LPSがCD33(dim)とCD33(bright)の蛍光強度を増加を増加させるのに対して、VT1はCD33(bright)でのCD33の蛍光強度のみを増加させた。サイトカインについてはVT1添加(1-20μg/ml)では顆粒球画分で強いIL-1ra、IL-8、IL-6、TNF-α産生が認められた。さらに(2)ヒト末梢血から、モノポリ緩衝液で顆粒球画分と、単球両分に分画し、10%FCS RPMI1640培地に浮遊させて同様の検討を行った。その結果、(1)とほぼ同様の結果を得た。このようにVT1は全血培養で比較的高濃度ではあるが単球のみならず好中球を直接活性化していることが示唆された。現在顆粒球にべロ毒素に対する受容体(CD77,Gb3)が存在するか,顆粒球に結合したべロ毒素の検出をフローサイトメーターで検討中である。 2. HUS症例の検討 岩手、帯広、秋田、近畿地区でのHUS症例、非HUS症例について血漿のサイトカインについて精査している。その結果、HUS症例では、非HUS症例より有意に血中IL-8や顆粒球エラスターゼが高値の症例であることがわかった。
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