研究概要 |
ブタコレラ菌(Salmonella enterica serovar Choleraesuis)の細胞侵入による血管内皮細胞の宿主応答を明らかにし、引き続き起こる局所炎症反応についての分子メカニズムを解明するため、次の実験を行った。(1)ブタコレラ菌の血管内皮細胞への侵入に伴う炎症性サイトカイン(IL-1 α,IL-1 β,IL-6,IL-8およびTNF-α)の産生をRT-PCR法を用いたmRNAの定量化を行い、野生株感染血管内皮細胞とinvA変異株感染血管内皮細胞または非感染血管内皮細胞とそれぞれ比較した。その結果、野生株感染血管内皮細胞のみでIL-8の発現が上昇していた。(2)ブタコレラ菌の血管内皮細胞への侵入による各種接着分子、P-selectin(CD62P)、E-selectin(CD62E)、ICAM-1(CD54)およびVCAM-1(CD106)、の細胞表面への発現を蛍光抗体法を用いて観察することを試みた。感染血管内皮細胞において菌の侵入した内皮細胞でのみこれらの接着分子の発現が誘導されるのかを調べるために、まず蛍光物質であるGreen fluorescence protein(GFP)を発現するプラスミドを構築し、ブタコレラ菌野生株を形質転換した。形質転換体は蛍光顕微鏡下で観察すると緑色の蛍光を発する。次に、本形質転換体を血管内皮細胞に感染させ、感染1、3および5時間後の感染細胞をホルマリン固定後、各接着分子の単クロン抗体を用いて蛍光染色した。サンプルはすべて共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察した。ブタコレラ菌感染5時間後の血管内皮細胞において、P-selectin、E-selectin、ICAM-1およびVCAM-1、すべての接着分子で細胞表面への発現がみられた。現在、感染細胞におけるこれらの接着分子の発現を定量的に比較するためのELISAを開発中である。
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