研究概要 |
昨年まで、細菌性ホスフォリパーゼC(PLC)の構造と機能を明らかにするため、ウエルシュ菌α毒素(370残基)のN-domain(Ncp,250残基)とC-domain(Ccp,120残基)、ビフェルメンタンス菌PLC(CbPLC,372残基)のN-domain(Ncb,250残基)とC-domain(Ccb,122残基)、そして、セレウス菌PLC(BcPLC)を組み合わせた結果、α毒素のC-domainは、細胞膜への結合とN-domainの酵素活性に重要であると報告した。感染症予防のためには、優れたワクチンの開発が重要なポイントとなる。ワクチンは、毒性がなく、抗体産性能が強いことが望まれる。上述したように、α毒素C-domain(120アミノ酸残基)は、毒性を全く示さないことが判明している。我々は、種々の長さのC-domain(C末から120、90、60、30残基)を作製し、フロイント完全アジュバントで乳化後、マウスに2回免疫(10日間隔)した。これらマウスにウエルシュ菌(α毒素産生株)を投与して、防御作用を検討したところ、免疫していないマウスに比較して、120残基のC-domainで免疫した場合、致死の阻止が、そして、90残基ので免疫した場合、致死時間の有意は遅延作用が認められた。一方、60と30残基のC-domainで免疫した場合、阻止作用は、認められなかった。さらに、各C-domainで免疫したマウスから、抗血清を採取し、α毒素活性を中和するかどうかを検討した結果、120残基のC-domainで免疫したマウスの抗血清が最も強い中和活性を有し、ついで、90残基、または、60残基で免疫したマウスの抗血清で、30残基で免疫したマウスの抗血清は、中和活性を示さなかった。以上の結果から、120残基のC-domainで免疫した場合、優れた予防効果が得られることが判明した。
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