研究概要 |
細菌性ホスフォリパーゼC(PLC)の構造と機能を明らかにするため、ウエルシュ菌α毒素(370残基)のN-domain(250残基)とC-domain(120残基)の役割を検討し、N-domainが、酵素活性に、C-domainが結合に関与することを明らかにしてきた。今年度は、α毒素の生物活性発現には、Ca^<2+>イオンの存在が必須であることから、C-domain中でCa^<2+>イオンの結合に関与すると考えられている269位と336位のAsp残基をAlaにアミノ酸置換した変異毒素(D269A,D336A)を作製、精製し、その活性を測定した。その結果、酵素活性は、wild-typeと比較して、いずれの変異毒素も変化が認められなかった。これに対して、溶血活性は、D336Aは、wild-typeの約1/100に減少したが、D269Aは減少しなかった。次に、wild-typeと変異毒素の赤血球への結合を検討すると、wild-typeとD269Aは、同程度に結合したが、D336Aは、結合が著しく減少していた。さらに、D336Aの溶血活性に対するCa^<2+>イオンの効果を検討するため、種々の濃度のCa^<2+>イオン存在下で検討すると、wild-typeと比較して、D336Aは、Ca^<2+>イオンに対する感受性が低下していた。以上の結果から、336位のAsp残基の変異により、毒素の結合に関与するCa^<2+>イオンが結合できないため、毒素活性が減少する可能性が考えられ、C-domain中の336位のAsp残基は、毒素の細胞への結合に深く関与するCa^<2+>イオンの重要なリガンドであること推察される。
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