研究概要 |
最近、外国渡航者の下痢原因菌として注目されているAeromonas sobriaが産生する溶血毒素の精製に成功した。この溶血毒素は、溶血活性の他に、下痢活性を有する特異な毒素である。本毒素の下痢発現機構を明らかにすることは、大腸菌が産生する耐熱性下痢毒素II(STII)の下痢発現機構解明に大きく貢献すると考える。そこで、溶血毒素の性状について検討し、以下の結果を得た。 1,溶血毒素は、活性のない前駆体として菌体外に分泌された後、プロテアーゼでC末側が切断され、活性化されることが明らかとなった。 2,溶血毒素は、マウス腸管上皮組織に損傷を与えることなく、下痢を引き起こすことが明らかとなった。 3,溶血毒素はマウス腸管上皮細胞のプロスタグランジンE_2の産生を促進すること、そして、本毒素の下痢活性はプロスタグランジン合成阻害剤であるインドメタシン処理で阻害されることが明らかとなった。 4,A.sobriaの溶血毒素は、大腸ガン由来細胞であるT84細胞に対し、サイクリックAMP(cAMP)産生を促進し、しかも、細胞外cAMP濃度を上昇させた。今後、cAMPと下痢との関係を検討する。 5,A.sobrian溶血毒素は、腸管細胞膜に存在する分子量が約66kDaのGPI-アンカータンパク質に結合することを明らかにした。
|