ヒトT細胞白血病ウイルス1型は成人T細胞白血病(ATL)やHTLV-1関連脊髄症(HAM/TSP)などの原因ウイルスとして知られている。しかしHTLV-1によるATLの発症機序は、まだはっきりしていない。そこでATLやHAM/TSPなどHTLV-1関連疾患の発症機序を解明するために、HTLV-1の感染小動物モデルを樹立するのは重要だと考えられる。従来マウスの細胞にはHTLV-1が感染しにくいと報告されていた。しかし我々はHTLV-1産生ヒトT細胞株MT-2細胞を新生仔マウスの腹腔内投与により、マウス細胞へのHTLV-1感染を証明した。HTLV-1の感染は細胞間の接触が主とされ、cell-free HTLV-1による感染については十分解析されていない。そこで、Cell-freeウイルスをマウス細胞株、DA-1、NIH3T3およびB1細胞に感染させ、24時間後に細胞を回収した。細胞破砕液中のHTLV-1プロウイルスのpX配列がPCRにより検出された。非感染細胞からは検出されなかった。ATL患者血清はNIH3T3細胞とB1細胞へのHTLV-1の感染抑制が観察された。 従来マウス細胞へのHTLV-1の感染は難しいとされていたが、本実験により広帆なマウス細胞種へのHTLV-1感染がおきることが明らかになった。Cell-free HTLV-1を用いた実験系はHTLV-1のマウス細胞への感染メカニズムを調べる上で有用と考えられる。また、マウスは、HTLV-1のキャリアー状態を解析する上で有用な動物モデルであると考えられた。
|