本検討において、我々は、以前に同定したエピトープに加え、さらに日本人に頻度の高いHLA ClassI分子である、HLA-A11、-A24、-B51拘束性のCTLエピトープを明らかにした。また、感染者体内の抗原特異的T細胞の変動を解析するために、6種のHLA-B35拘束性のCTLエピトープを用いて、4量体HLA-B35/HIV-1エピトープ複合体(HLA-B35/HIV-1 tetramer)を作成した。このHLA-B35/HIV-1 tetramerを用いて、HIV-1感染者の末梢血リンパ球中のHIV-1特異的T細胞の解析を行った。その結果、HLA-B35陽性のHIV-1感染者間で高率にHLA-B35/HIV-1 tetramer陽性細胞が検出された。さらに、多剤併用療法の効果の認められた2症例では、血中HIV-1量の減少と共にエピトープ特異的T細胞の頻度が減少していた。また、測定期間中、臨床症状の悪化と共に、HIV-1特異的T細胞が減少している症例が認められた。この症例については、エピトープの変異により、CTLの認識が変化している可能性も考えられ、今後HIV-1の変異とT細胞の認識との関係を詳細に検討していく予定である。以上、今回われわれが作成したHLA-B35/HIV-1エピトープtetramerはHIV-1感染者体内のHIV-1特異的T細胞の動態解析に有効な手段であることが示された。今後、この方法により、複数のHLA-Class I拘束性のHIV-1エピトープに対するHIV-1特異的T細胞の変化を検討し、HIV-1の変異に対する抗原特異的T細胞の認識の変化を解析する予定である。
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