研究概要 |
インフルエンザ脳炎/脳症患者から分離されたウイルスの中にトリプシン非存在下でもプラーク形成を行い、増殖能が高いウイルス(NV)が存在した。我々はこのトリプシン非依存性増殖能と神経親和性との関連を調べるため1.NAとプラスミンの関係、2.ヒト神経細胞および血管内皮細胞での増殖能3.マウス脳内での増殖能を検討した。1.最近マウス脳馴化株WSN株のプラスミン依存的増殖能が報告された。NVでも同様の効果があるのかを検討するため血清中のプラスミンの効果を除く目的で、ウイルス感染時に5回念入りに細胞の洗浄を行いプラーク形成を行ったがプラークは形成された。前述のWSN株のプラスミン依存的増殖にはプラスミンのNAとの結合が示唆されているため、発現系を用いてHA,NAを同時に発現させプラスミンの影響を検討したが、NVではプラスミンの効果は見られなかった。この結果は少なくともNVウイルスではプラスミンによる活性化は起きないと考えられる。2.細胞特異的増殖能を検討するため株化された神経細胞、グリア細胞、および血管内皮細胞でのNVの増殖を検討した。WSN株と異なり神経細胞での増殖はほとんどみられなかったが、グリア細胞では増殖能した。また血管内皮細胞でも多少の増殖が見られた。各細胞での増殖能の比較はプラーク形成法で現在定量化している。3.さらにマウスの脳内での増殖能があるかどうかを検討した。マウス脳に10^4PUF濃度のウイルスを接種し、9日間経過を観察したがWSN株接種時に見られる、体重の軽減、運動能の低下は見られなかった。ウイルス接種後3日、5日、9日後の脳を還流固定後摘出した。切片作成後、ウイルス抗原の存在の有無を検討しているところである。
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