インフルエンザウイルスRNAポリメラーゼは、PB1・PB2・PAという3つのサブユニットからなり、ウイルスゲノムRNAの転写・複製を触媒する多機能酵素である。そして、PBlはRNA合成活性を持つサブユニットであり、PB2は真核細胞mRNAキャップ依存性のウイルスmRNA合成に必須であり、PAはゲノム複製に必須のサブユニットである。我々は、その細かな機能部位の同定を目的として、各サブユニット全域をカバーし、互いにオーバーラップする約150アミノ酸ごとのペプチドに対するポリクローナル抗体を作製し、RNA合成を抑制する部位、キャップRNA結合活性、及び、キャップ依存性RNase活性を阻害する部位のマッピングを行なった。その結果、PB2のN末端(1-259)とPAのC末端(501-617)にRNA合成活性の阻害部位、PB2のN末端(1-159)と中央部(305-559)、PBlのN末端(1-222)、PAの中央部(301-517)とC末端(601-716)にキャップ依存性RNase活性の阻害部位がマップされた。さらに、PB2の中央部(402-559)にはキャップRNA結合部位がマップされた。これらの部位は、インフルエンザウイルスRNAポリメラーゼの構造上極めて重要であり、今後、阻害剤開発の標的となりうると期待できる。
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