研究概要 |
昨年度までにT細胞レセプタ-α鎖を先天的に欠損したマウスにおいては,加齢に伴い消化管免疫機構の破綻により炎症性腸疾患が自発的に発病すること,またTh2系の禁止T細胞クロ-ン(その表現形質はCD4^+,α^-β^+T細胞;すなわちTCRβ鎖のみを表出したCD4陽性細胞)の出現が発病に強く関わることを明らかにした.引き続いて上記禁止T細胞クロ-ンのT細胞レセプタ-の構造解析(RT-PCR-single strand conformation polymorphysm(SSCP)法およびDNA塩基配列レベルでのクロナリティ-の解析および2次元電気泳動法を応用したT細胞レセプタ-会合分子の解析)ならびにサイトカイン産生能などのエフェクタ-機能と炎症性腸疾患の関連を中心に解析をすすめた. その結果禁止T細胞クロ-ンのT細胞レセプタ-はTCRββホモダイマ-鎖よりなり,腸管局所においてクロナ-ルな集積像を示すこと,また通常のαβT細胞に比べてβ鎖超可変領域(CDR3)の多様性に乏しいこと,MHCクラスII抗原依存性に消化管常在細菌の刺激によりクロ-ナルに増殖すること,さらにIL-4を自発的に産出して自己や食餌抗原に対する異常なB細胞応答を誘導し、最終的にIBDに特徴的な病態の構築に寄与すること,などを明らかにした. 以上の所見よりTh2系の禁止T細胞クロ-ンがT細胞抗原受容体α鎖欠損マウスのIBDの主たる病因であり,この異常T細胞は未特定の消化管固有の抗原刺激によりクロ-ナルに発達分化することが強く示唆された.
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