研究概要 |
平成10年度は、チロシンホスファターゼPTP-Jのジーンターゲティングによるノックアウトマウスの作製を目的に研究を進めた。まず、PTP-J遺伝子のPTPドメインIに対応するcDNA断片をプローブとして、129/Jマウス由来のゲノムライブラリーをスクリーニングした結果、約8.7kbのゲノムDNAが得られた。このゲノムDNAをもとに、組換え用ベクターを構築した。単腕部分はPCRにより作製し、長腕部分にはゲノムDNAのXbaI-SalI断片(約4.5kb)を用いた。ネオマイシン耐性遺伝子カセットは、エクソンを含む約1kbのゲノムDNAと置換された。最終的に完成した組換え用ベクターは、胚幹細胞株に電気穿孔法で遺伝子導入され、G418存在下での選択に耐性であった胚幹細胞コロニーをPCRによって解析した結果、相同組み換えによる目的の変異が導入された胚細胞株(D11)が得られた。その頻度は、1/1200であった。DllはC57BL/6マウス由来の胚盤胞にマイクロインジェクションされ、仮親の子宮の移入された結果、キメラマウスが得られた。雄キメラマウスを、C57BL/6マウスと交配し、PTP-J遺伝子に変異の導入されたagoutiマウス(♂4匹,♀5匹)が得られた。さらに、それらを交配することにより、PTP-Jノックアウトマウス(PTP-J^<-/->マウス)が得られた。PTP-J^<-/->マウスにおいて、胎生期の発生や繁殖能力に異常は認められなかった。また、胸腺、脾臓、リンパ節等をフローサイトメトリーにて解析したが、正常マウスとの差異は認められなかった。さらに、解剖学的にも異常は認められなかった。今後は、PTP-J^<-/->マウスを用いて、生化学的解析によるPTP-Jの基質の同定、及びPTP-Jの発現が通常認められる器官・器官(骨格筋、前立腺、膵臓など)の多面的解析を行う予定である。
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