平成10年度から11年度にかけて、引き続きCD40Lによって特異的に誘導される新規遺伝子の検索を行った。その結果、CD40Lによって誘導される6種類の新規遺伝子Clast-6(CD40ligand-activated specific transcripts)を単離した。これらの遺伝子の各免疫担当細胞における発現様式は様々であるが、B細胞分化並びに活性化の過程、さらにはアポトーシスの過程において、これらの遺伝子の発現が増強あるいは低下している事が判明した。すなわち、Clast遺伝子群とリンパ球の分化、活性化が強い相関を示すことが推察される。とりわけ、解析が進行しているClast1遺伝子に関して、以下のことが判明した。 (1)塩基配列から推定すると、263個のアミノ酸からなり、4つの膜貫通ドメインをもと膜型蛋白である。(2)その発現は、成熟B細胞に限定され、未熟B細胞、T細胞および繊維芽細胞等ではその発現は検出されない。(3)高親和性IgEレセプターβ鎖(FcεRβ)とアミノ酸レベルで約37%の相同性を有し、しかもN末端の細胞質ドメインに活性化シグナルを抑制するITIM(immunoreceptor tyrosine-based inhibition motif)モチーフが存在する。(4)CD40L刺激によるClast1遺伝子の発現様式を検討したところ、正常脾B細胞では、その発現はCD40L刺激で誘導され、さらにこの発現誘導が抗IgM抗体処理によって抑制される。(5)未熟B細胞株WEHI231にClast1を強制発現させた形質転換株では、抗IgM抗体によるアポトーシスが著しく生じやすくなっている。したがって、Clast1はCD40と抗原受容体からのシグナル伝達に関与し、B細胞のアポに深く関与する分子と推察された。(6)RT-PCR法を用いて、Clast1遺伝子の発現を検討したところ、B220陽性PNA陽性の胚中心B細胞においてその発現が低下することが判明した。(7)Clast1の細胞外ドメインに対するペプチド抗体を作製した。(8)Clast1cDNAを免疫グロブリン遺伝子のポロモーターとエンハンサー(Eμ)をもつ発現ベクター(PBSVE6BK)に導入し、これを用いてトランスジェニックマウスを作製した。現在までに6系統のFounderマウスが得られたところである。
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