研究概要 |
ETSファミリー転写因子のDNA結合ドメイン蛋白の作製とDNA結合能の検討 マウス成熟個体の胸腺よりETSファミリーの遺伝子を検索して、Ets-1,Ets-2,GABPα,Fli-1,PEA3及び新規のETSファミリー3種の発現がみられた。これら胸腺特異性ETSファミリー転写因子全てについて、その完全長のcDNAをクローニングして、ドメイン構造を解析した。更に、この完全長cDNAと、DNA結合ドメインだけの遺伝子断片とを、大腸菌発現系pGEX5ヴェクターにGST融合蛋白を形成させる様組み込んだ。完全長については、Ets-1、Ets-2、GABPα及び新規の36-3について、可溶性のタンパクを大量生産できたが、DNA結合ドメインだけの場合、生産されたタンパクは、その断片のアミノ酸配列開始点によっては大腸菌内でinclusion bodyを作製した。後者の場合、個々のDNA結合ドメインをinclusion bodyとして精製した後カオトロピック試薬にて可溶化し、透析法にて、通常の緩衝溶液条件下で可溶化する条件を検討し、全て可溶性のタンパクとして得られているが、生産効率は、かなり低下した。 得られた、完全長タンパクとDNA結合ドメインについて、種々の配列を持つオリゴヌクレオチドを用いて、各ETSファミリー転写因子が認識するDNA結合モチーフを検討した。検討方法としては、従来の放射能標識オリゴヌクレオチドとタンパクとを混合してゲル・シフト法で結合を検出する実験法に加えて、Resonant Mirror Detector(Fisons Applied Sensor Technology社製IAsys)を用いる方法を開発した。後者は、簡便に多くの測定点によるデーターが得られるので、実験の進捗状況が著しく改善されている。 DNA結合能については、生産の容易な完全長について、体系的に検討中であるが、個々の転写因子によって、DNA結合モチーフの明確な違いが検出された。とりわけ、基本モチーフ5'GGA3'の5'側が、Aの場合(5'AGGA3')とCの場合(5'CGGA3')とで、結合の有無が分かれた。 ETSファミリーの遺伝子は、T細胞レセプターγ鎖遺伝子の発生段階によるV領域遺伝子種の発現制御に関与していると考えられるが、特に、V_<γ4>遺伝子の発現を制御するプロモーター領域上流のETS結合モチーフ5'AATTCCGGAAGGAATGT3'(下線はETSモチーフ)に対して、特定ETS転写因子の結合の明確な有無が、このオリゴヌクレオチドに対して得られいる。今回の結果は、次の段階として、結合を示す転写因子がどの様に遺伝子制御をするかの検討に絞り込む事を可能としている。
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