花粉症やアトピー性皮膚炎に代表されるI型アレルギー疾患の発症機構には、アレルゲン特異的な免疫グロブリンE(IgE)抗体が大きく関与していることが知られている。このIgE抗体の産生には、アレルゲンに反応してIL-4やIL-5等のサイトカインを産生するTh2タイプのヘルパーT細胞の誘導が必要である。ナイーブT細胞からTh1/Th2細胞への機能分化過程において、T細胞抗原レセプター(TCR)の活性化に加え、Th1細胞についてはIL-12が、Th2細胞についてはIL-4の存在が必要であることが明らかになった。しかしながら、TCRの下流のどのシグナル伝達分子の活性化がどのようにTh1/Th2細胞の分化(commitment)を決定しているのかは殆ど明らかにされていない。これまでの研究によって、Th2細胞の分化にはRas/MAPK系の活性化が必須で、この経路の活性化がうまく起こらなければTh2細胞ができないうえに、Th2細胞になっていたものがTh1細胞になってしまうことが明らかになった。この実験結果は、新しいアプローチによるアレルギー疾患の発症コントロールにおける治療法確立に貢献すると考えている。
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