研究概要 |
震災ストレスのような急性で非日常的なストレスと慢性で日常的な職場ストレス双方に対するストレス耐性因子を明らかにすることは予防医学的に重要である。本研究では、ストレス耐性の決定要因の定量的評価を目的として、阪神淡路大震災被災者及び某製造業従業員に同意を得て、ストレス耐性因子とストレッサー、心身の健康度、医学生物学的指標(唾液中cortisol、NK・LAK細胞活性)等との定量的評価および相互関連の解析を行った。 質問票は、震災ストレスは震度や震災関連life event、職場ストレスはKarasekのJCQ、ストレス反応は、PTSD尺度、Zungの抑鬱度、GHQ-28、職務満足度・生活満足度尺度等から構成される。ストレス耐性因子として、ライフスタイル(喫煙、飲酒、運動、睡眠など)、human support、Type A、alexithymia,stress coping(positive,negative)等について検討した。 震災ストレスについては、震災前後で良好なライフスタイルが維持できたことやhuman supportの多いことがPTSD出現の割合を低下させていた。また精神的健康度の低下していた人では唾液中coritisolの増加やNK細胞活性の低下を示したが、良好なライフスタイルや生活満足度の高いことは精神的健康の維持に有効であった。職場ストレスに対しては、良好なライスタイル、適正なstress control、上司のsupportや積極的対処の増加はストレス軽減と有意であった。唾液中cortisolは、ストレスの多いことやストレス耐性の低い場合に増加したり日内変動の攪乱がみられ、簡便で非侵襲性のストレス指標どしての活用と、NK細胞活性の代替指標の可能性が示された。NK細胞活性は、不良なライフスタイル、少ないhuman supportで低下し,Type A傾向が強いとNK・LAK細胞活性とも抑制される傾向がみられた。 本研究からストレス耐性の決定要因としてライフスタイル、human support、positive stress copingの役割の大きいことが明らかどなった。今後の課題として、ストレス耐性のより直接的で客観的な医学生物学的指標の開発について検討する必要性がある。
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