研究概要 |
上部消化管内視鏡検査,及び生検試料の病理組織検査において胃癌と診断された、年齢が40歳から65歳の123例の胃癌患者から血液を収集した。これらの胃癌症例に対して,性・年齢をマッチングさせた対照を一般地域住民検診で上部消化管に特に異常を認めなかった健診受診者から選択し対照群とした。なお、胃癌群は、早期,進行の2群にわけ、対照群を加え、計3群間において,血清ペプシノーゲン(以下、PG)I値,PGII値,I/II比及び血清ガストリン値の比較検討を行った。 この胃癌症例-対照研究により,以下の結果を得た。 1.PGI/II比は男女両群において,対照群,早期胃癌群,進行胃癌群の3群間に有意な差が認められ,胃癌群においては対照群に比し有意に低下していた。また,血清ガストリン値は対照に比し胃癌症例において有意に低下していた。 2.PGI値と PGI/II比を用いる胃癌スクリーニングの最適カットオフ値をユーデン指数を指標として算出した結果,PG<40かつPGI/II比<3.5が最適カットオフ値となり,この時胃癌に対する感度と特異度はそれぞれ0.50及び0.87であった。また、血液による胃癌スクリーニングにPGI値、PGI/II比に加え、血清ガストリン値を加味するとユーデン指数が高くなり、ガストリンの胃癌スクリーニングへの有用性が示唆された。 3.喫煙、アルコール飲酒、健診時の消火器疾患の有無、胃腸疾患の既往の有無、性別,及び年齢の6因子とPG諸値,及びガストリン値の関連を重回帰分析を用いて分析した。PGI値に対して、胃腸疾患の既往のみが有意な説明変数となり、PGII値に対しては年齢と胃腸疾患の既往の2つの説明変数が有意になった。PGI/II比に関しては、性及び年齢の2因子、ガストリン値に関しては、性、年齢、消火器疾患の有無、既往の有無の4因子が有意になったが、いずれのパラメータも喫煙、および飲酒状況の2つの説明変数は有意にはならなかった。 4.ヘリコバクターピロリ抗体陽性率は、男女とも加齢とともに増加し,本研究の一般集団(対照群)全体の陽性率は、66.9%であった。
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