研究概要 |
1)1989-1993年和歌山県の紀伊半島ALS「減少」の実態解明のため疫学調査を実施した。県平均年間発病率は、1.43人/人口10万人であった。3.0人/人口10万人以上の高発病率は、日高郡以南、特に牟婁地方に見られ、古座川町(人口4193人、1990年)と9.54が最も高率であった。しかし、串本町大島(人口1667人、1990年)のみは例外で過去40年間患者発症を見ない。 2)1973-94年紀伊半島三県の人口動態死亡票データにより死亡頻度の変遷を解析した。この22年間で紀伊半島三県において799例(男性472/女性327名;男女比1.44:1)を得た。平均年間死亡率(年齢調整)は、和歌山県では最高値から漸次低下を示し、紀伊半島全体としては近年1.0人/10万人へと均一化する傾向が見られた。しかし、和歌山県牟婁郡ではなお高率が保たれていた。 3)多発地区古座川町と対照地区串本町大島において河川・上水道水を分析した。古座川水系の河川・上水道のCa,Mg含有量(平均Ca 2.3,Mg 0.75ppm)は極めて低く、この傾向は日高郡以南に見られるが、串本町大島の井戸水のみは(Ca 13.3,Mg 4.3ppm)と全国平均レベル(Ca 8.8,Mg 1.9ppm)を上まった。 4)House-to-house studyのため特定疾患医療受給者情報を利用し、地域医療機関や保健所の協力を得て古座川・大島地区の予備調査を行った。1990-99年古座川町では、ALS 2名、PDC-ALS 2名の計4名の発症を確認した。このうちPDC-ALS2例共に古座川地区のALS家系に属した。過去この地区にはPDC-ALSの発症の記載はない。古座川町の平成12年1月1日現在の時点有病率は、71.5人/10万人であったが、大島になお患者は確認できなかった。 今後、地理医学的観点から両地区の相違点を更に解明する必要がある。
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