フッ素は骨中に極めて高濃度に含まれている元素で、血液中における恒常性維持機能を有しないと考えられるため、血清中フッ素濃度は骨代謝を反映する可能性がある。20歳代から70歳代までの女性46名(平均年齢±標準偏差:51.8±14.6歳)を対象者として、血清中フッ素イオン濃度、骨形成マーカーとして骨型アルカリフォスフォターゼ(骨型ALP)、骨吸収マーカーとしてType I collagen C terminal telopeptide(ICTP)を測定した。46名の血清中フッ素イオン濃度は、平均値±標準偏差(M±SD)で7.59±2.74μg/lであった。また、年齢の増加に従って有意(p<0.01)に上昇していた。骨型ALPとICTPのM±SDは、それぞれ33.6±12.1U/lおよび3.17±0.62μg/lで、フッ素イオンと同様に年齢の増加に従って有意(p<0.05)に増加していた。 年代別フッ素イオン濃度、骨型ALPおよびICTPは、20歳(n=3):4.91±0..13μg/l、24.8±7.07U/l、3.23±0.75μg/l;30歳代(n=9):5.73±1.65μg/l、22.7±6.76U/l、2.89±0.59μg/l;40歳代(n=8):5.59±1.35μg/l、30.2±10.8U/l、3.06±0.18μg/l;50歳代(n=10):8.65±1.86μg/l、38.7±11.0U/l、2.96±0.58μg/l;60歳代(n=10):8.82±2.37μg/l、42.6±12.3U/l、3.36±0.74μg/l;70歳代(n=6):10.6±3.41μg/l、35.2±8.04U/l、3.77±0.57μg/lであった。 フッ素イオン濃度と骨型ALPおよびICTPとの関連について検討した。その結果、フッ素イオンと骨型ALPおよびICTPの間に有意(p<0.05)の相関関係が認められたが、この関係は年齢が撹乱要因となっている可能性がある。このため、重回帰分析を行い、多因子を調整した回帰係数は骨型ALPが0.22(p=0.095)、ICTPが0.16(p=0.185)であり、いずれについても有意な関連は認められなかった。また、フッ素イオン、骨型ALPおよびICTPのいずれについても、骨密度測定値との間に有意な相関関係は認められなかった。
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