本年度より最終年度までに計画していた次の課題1)光散乱特性と骨の微細構造の関連性に関する検討、2)光吸収特性と骨髄組成の関連性に関する検討、について、まずin vivoでの光検出に関する検討を行なった。生体組織中で最も光吸収が強く、かつ酸素化・脱酸素化に伴う吸光度変化の大きいのが赤血球内のヘモグロビン(Hb)であり、体外から測定光として近赤外光を照射し、後方散乱してきた光を検出した場合の検出効率および、光吸収体が吸光度変化したときのみかけの吸光率とそれに伴う散乱係数推定への影響を評価するために、ヒトとほぼ等しい大きさの頭部を持つブタを用いて検討した。Hbの等吸収点と等しい波長に吸光スベクトルのピークを持つインドシアニングリーン(ICG)を静脈内投与し、頭蓋骨外から近赤外光を照射し、25mmおよび40mmの距離を置いた受光器で受光した光を検出器に導いてICG投与後の変化を連続計測した。光計測と並行して静脈血の採血を行ない、体外より計測したみかけの吸光度と真の吸光度が一致するかどうかを確認した。胆液へのICG排泄に伴い、半減期約6.3分でICGは消失し、それに伴って血液の吸光度は1.5からほぼ0にまで減少するのを十分な信号対雑音比で計測し得ることが明らかとなった。一方、光散乱の数理モデルに基く骨の光散乱係数の推定値は、ICG投与による吸光度の変化に伴い1.05から1.15にまで変化した。急性実験中に頭蓋骨の骨密度が変化する可能性は小さく、この変化は大きな光吸収変化によるアーティファクトと考えられるため、単純な球形ではなく頭蓋骨の形状に応じた数理モデルを構築し、それに基いて光散乱係数の推定を行なうための検討を進めている。
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