本年度は、骨以外の生体組織が生体位での骨の光特性計測に及ぼす影響の評価を目的として、麻酔下ブタにおける計測と解析を行なった。ブタ頭部に光ファイバを介して半導体レーザからの光を照射し、一定距離を経て後方散乱により射出される光を同様に光ファイバで受光し、検出器に導いて減光度の解析を行なった。Hbの酸素化・脱酸素化に伴う近赤外吸収スペクトルの影響を評価するため、人為的に血液の吸光度を変化させる手段として、インドシアニングリーンを静注し、胆汁排泄により減少するインドシアニングリーン濃度の変化を追跡するとともに経時的に採血を行ない、血清中のインドシアニングリーン濃度を試験管内で分光学的に定量した。血清中のインドシアニングリーン濃度と体外から計測した近赤外領域の光の減光度を比較し、光拡散方程式およびモンテカルロシミュレーションによる光散乱・吸収の数理モデルにおけるシミュレーション結果と比較することにより、骨の散乱係数とその推定値に及ぼす吸光度変化の影響を評価した。これらの結果に基づいて、骨散乱特性の無侵襲的評価における問題点と解決策に関する基礎的知見を得た。
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