研究概要 |
環境中化学物質に関与する薬物代謝酵素(Cytochrome P450、Glutathione S-transferase(以下GST)、N-acetyltransferase(以下NAT))の個体差に関与する1)新たな遺伝子多型の発見、2)発癌との関連性、3)トリクロロエチレン曝露作業者の生物学的モニタリング値への影響について研究を行い以下のような成果を得た。 1)アリルアミン代謝に関与する抱合体酵素sulfotransferase(以下ST)の分子種うちSULT1A1の遺伝子多型(Arg213His,Met223Val)を発見した。 2)遺伝子多型と発癌性に関しては、Benzo(a)pyreneの代謝に関与する、GSTM1、P1、ハロゲン化メタンを代謝するGSTT1、アリルアミン代謝に関与するNAT2の4つの薬物代謝酵素の遺伝子多型と尿路上皮癌、胃癌、大腸癌、口腔癌感授性、喫煙との関連性を分子疫学的に解析した。その結果、GSTM1、NAT1とNAT2遺伝子多型が尿路上皮癌発症の遺伝要因であること、GSTM1、P1遺伝子多型と口腔癌との有意な関連性を見出した。また、GSTM1の遺伝子型で分け、喫煙量と発癌危険度との関連性を解析したところ、遺伝子型によってその危険度パターンが異なることが示された。同様の結果がNAT2の遺伝子型にも観察されており、化学物質の曝露に対して感受性が異なる集団の存在が示唆された。 3)トリクロロエチレンを使用している作業現場を選定し、遺伝子多型と尿中総塩化物と関連性について検討した。しかし、トリクロロエチレンの曝露濃度が低く代謝酵素GSTとのあいだに関連性は認められなかった。
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