クロロフェノールの細胞毒性評価のため、まず、広く用いられているクロロフェノール化合物であるペンタクロロフェノール(PCP)について、その細胞呼吸への影響を検討した。 ラット肝臓よりミトコンドリアを分離し、酸素電極を用いて、酸素濃度を測定した。今回の実験では、代表的けいれん誘発物質のペンチレンテトラゾール(PTZ)の作用との比較を行い、さらにそれへのカルニチンの効果も検討した。その結果、PCPは、酸素消費増加と呼吸調節比(RCR)低下をもたらした。これらのPCPの効果は、1mMのL-カルニチンによって抑制されたが、D-カルニチンは無効であった。これと対照的に、PTZは、状態4呼吸時に150mMまで加えても、酸素消費を亢進させなかった。ミトコンドリアを3.3mMのPTZとインキユベートすると、酸素消費、RCR、ADP/O比いずれも低下した。また、これらは高濃度(20mM以下)のL-カルニチンによって抑制されなかった。これらから、PCPの脱共役作用が確認された。また、内因性物質であるL-カルニチンが、 PTZに対しては防御効果を発揮しえないものの、少なくとも試験管内では、PCPからミトコンドリアを保護しうることが明らかとなった。一方、LLC-PK1細胞において、N-アセチルシステイン(NAC)がカドミウムの細胞毒性(色素排除減少、LDH漏出)さらにc-Fos蛋白発現を抑制しうることを見いだした。そこで、この系における夕ロロフェノールの影響とそれへのNACの効果について、現在検討中である。
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