研究概要 |
最近のアレルギー性疾患の急激な増加に対して発症機序等に関する研究は数多く行われている。しかし,症状として訴えの多い鼻水,鼻詰まり等の上部気道における生理学的な影響について実験小動物を用いた検討は殆ど行われていない。そこで,本年度はアレルギー性疾患モデルラットの作成と鼻腔内部の気流抵抗の測定方法の確立を目標に基礎的な実験を行った。まず実験小動物として用いたIgE高応答とされるBrown-Norway(BN)ラットの特質を知るために,5週齢より8,12,17,32,45,69および90週齢までの各時点で体重,臓器重量,気管支肺胞洗浄液中の細胞分画の変化を経時的に測定した。その結果,12週齢のBNラットがアレルギーモデル動物としての実験に良く適していると考えられる事を,体力・栄養免疫学雑誌に発表した。また,アレルギー性疾患と大気汚染物質の曝露との関係を知るために,幼若期よりBNラットとFisherラットにNO_2を曝露して上記と同様の測定を行い,曝露の影響と種差による違いについて比較検討した。その結果,顕著な系統差がみられた事を大気環境学会で発表した。次に,BNラットを用いて鼻腔抵抗の測定方法について,鼻腔カニューレよりレスピレーターにて送気した時の圧(Respirator圧)と,4段階の定流量で送気した時の圧(Flow圧)をみる場合の2方法で検討したところ,Respirator圧を指標として鼻水の症状を測定する事が可能になると思われ,体力・栄養免疫学雑誌および日本公衆衛生学会にて発表した。今後は,アレルゲンの効率的な投与方法,鼻汁量の測定方法について検討する予定でいる。また,アレルゲン投与により引き起こされる可能性のある粘液性の鼻水および浮腫による形状的な変化による抵抗の出現も考えられ,F10w圧についても再考の必要があると思われる。
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