研究概要 |
最近のアレルギー性疾患の急激な増加に対して発症機序等に関する研究は数多く行われている。しかし,症状として訴えの多い鼻水,鼻詰まり等の上部気道における生理学的な影響について実験小動物を用いた検討は殆ど行われていない。そこで,前年度はアレルギー性疾患モデルラットの作成と鼻腔内部の気流抵抗の測定方法を確立する事を目標に基礎的な実験を行った。今年度は,アレルゲンの効率的な投与方法および投与量等について検討した。即ち、実験動物としてIgE高応答とされるBrown-Norway(BN)ラットを用いて、アレルゲンにはスギ花粉主要抗原であるcryj-1を用いて血清中のスギ花粉特異IgE抗体の経時的な測定を行った。また、感作の成立時に、上部気道におけるアレルギー性疾患の影響を生理学的に測定した。生理学的測定として、鼻腔内圧の変化と鼻汁量の測定方法について検討した。まずBNラットを3群に分けて、スギ花粉抗原を2回腹腔内投与する群(ip×2)、1回のみ腹腔内投与する群(ip×1)、1回の腹腔内投与後に2回点鼻投与する群(ip+in)とした。鼻腔抵抗値と血清中スギ花粉特異的IgG抗体価及び総IgE量より、アレルゲンの腹腔内投与に点鼻を併せての感作方法が最も効率的である事を第40回大気環境学会で発表した。次に、BNラットの雌を用いて、前述のアレルゲンの投与方法で感作を行い対照群、cryj-1群及びsaline群の3群とし、12週齢の時点で鼻腔内圧と鼻汁量を測定した。また、ラットの膣スメアを採取し、アレルゲン感作の効果と性周期との関係について検討したところ、ホルモン体系のバランスを変えるような影響が示唆された(第9回体力・栄養・免疫学会)。また、アレルゲン感作と同時に強制運動負荷を加えて気管支肺胞洗浄液中の細胞数の変化を検討したところ、細胞数の増加抑制効果が認められさらに詳細な検討を行っている。(第58回日本公衆衛生学会)
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