研究概要 |
下記の実測パラメータを得て,費用効果分析を行った。 パラメータ(1)効果と期待生存年数 研究地域での1986〜94年の全大腸癌症例1,145例の1998.1.1時点での生存状況は532例が大腸癌死亡例で,臨床診断例(病院群)と検診発見例(集検群)における治癒不能(5年生存を達成できない)症例はそれぞれ10.3%,26.8%と算出され,これらにそれぞれ1.85年,1.54年の生存年数(既報による)を与えた。他の症例は生命表により生存年数を与えた。(2)大腸癌罹患率と病期別割合,および初回治療費 安定したデータを得るために研究地域から県全体に拡大して1994〜97年の青森県での罹患率を一般住民(40〜79歳)の年齢階級別に求めた(基準人口718,480人:1997年)。この間の罹患数は2,526例で,検診群は360例であった。病期別割合はstageO+I,II,IIIa,IIIb,IVが両群でそれぞれ28.0,19.7,28.7,12.8,10.8%(病院群),63.6,13.3,18.1,4.2,0.8%(検診群)であった。(3)感度・特異度 偽陰性の定義を陰性の検査後1年以内に診断された癌とすると,感度は82.5%,特異度は96.6%であった。費用効果分析 上記パラメータにより検診を行わなかった場合に対する行った場合の限界費用は,全体として807,287円/year of life savedであり,年齢階級別の概数でみると男女で40〜49歳ではそれぞれ186,172万円,50〜59歳では67,78万円,60〜69歳では36,90万円,70〜79歳では44,65万円と50歳以上で優れていたが,40歳代でも他のがん検診の報告に比し,優れていた。検診の感度(50〜100%),特異度(90〜100%)大腸癌罹患率(0.5〜3倍)により,感度分析を行ったが基本的に上記結果は支持された。また,病期別割合についても時期による差を考慮して,1986〜97年の罹患例を前・後半あるいは過去4年間について検討したが,同様の結果であった。〈結論〉大腸がん検診の死亡率減少効果の示された研究地域において同検診は救命のための費用効果比が高く,特に50歳代以上で顕著であると示された。検診の対象年齢は現行の40歳以上から,欧米と同様に50歳以上とするのが費用効果上優れていると示された。
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