研究概要 |
今日,多くの人々は環境中の動植物に起因する種々の抗原に曝露され,感作と脱感作を繰り返し,その一部の者にアレルギー疾患が発症してきている。そこで,地域的に重要な抗原曝露の質的・量的解明は,花粉症予防対策を考えるうえで,もっとも大切になっている。 我々は今回,スギ花粉症患者の高率地域で疫学調査を実施し,20才代,30才代における花粉症有病率は20%〜30%に達し,女性に高率であることが見出された。空中花粉調査では住民の曝露されている花粉は,スギ花粉とともにヒノキ花粉がその60%程度を占め,地域的にシラカバを含むシデ属花粉曝露も,高率に認められることが判明した。 ヒノキ花粉にはスギ花粉との共通抗原性があり,両者の花粉曝露により相乗的感作効果発現の可能性が示唆された。そこで,スギ,ヒノキ科花粉飛散と症状発症の関連を検討するとともに,抗原類似花粉である,スギ科メタセコイア花粉についても基礎的に検討した。 また,学童期の花粉症の実態を把握することを目的に,富山県内の18小学校,4中学校で自覚症状調査を実施した。その結果,興味深いことに同じ学童でも出生順位により,自覚症状の有症率の異なる傾向が示唆された。11年度には,上記の傾向の地域性,再現性等を含めて,総合的に検討し,若年期の抗原曝露の生体影響の特徴を解明して行きたいと考えている。
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