研究概要 |
老化促進マウス(SAM)は通常の老化過程を辿るAKR/N Slcマウスより肝組織中のglutathione(GSH)レベルが低下,glutathione disulfide(GSSG)レベルが上昇,glutathione redox cycleを形成する酵素活性も低下し,酸化的ストレス状態を呈していた。これに対し羅布麻エキスを投与したSAMでは抗酸化作用を示し,GSHの上昇とともに,glutathione peroxidase(GSH-Px),glutathione reductase活性が有意に上昇していた。しかしcatalase活性は変化しなかったが,活性上昇を示したGSH-Pxとともにhydrogen peroxide(H_2O_2)の消去に関与する酵素であるが,catalaseはペルオキシゾーム顆粒の中に局在しているのに対し,GSH-Pxは細胞質やミトコンドリアマトリックス中にあって,H_2O_2に加えlipid hydroperoxidesの掃除役も果たしている。羅布麻はチオバルビツール酸反応物質に対しても影響を及ぼしていることから,羅布麻の作用点として細胞質やミトコンドリアマトリックスである可能性が示唆された。一方,H_2O_2の発生の程度を表わす指標のglutathione redox ratio{GSSG/(GSH+GSSG)×100}が羅布麻投与群で有意に低下し,glutathione reductase活性が有意に上昇していることから,羅布麻はH_2O_2の発生を抑えるとともに,酸化型glutathione(GSSG)を還元型glutathione(GSH)に変換し,生体内の抗酸化状態を堅持しているものと推測された。GSH濃度は老化とともに脳,肝臓,肺などで低下し,ヒトでも健康な若者に比べ,60歳以上のヒトのほぼ半数で血中濃度が低下し,この変化は老化の進行と相関することが報告されており,羅布麻投与群で認められたGSHの上昇は,老化に伴って衰退するGSHにおける防御機構の予防に一助を与えるものと考える。
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