介護労働には夜間の介助作業などにおいて十分な照明環境を得ることが困難な状況でも作業せざるを得ないことが多い。本研究は、そのような状況下での作業特性を明らかにすることを目的としたもので、初年度である今年はモデル的な実験でその作業特性を測定する方法の開発を中心に行った。 まず、夜間介護における作業照度については、夜間就寝時の薄暗い照明が10〜50ルクス前後、ベッド下や部屋の隅などが局所的に10ルクスを下回る照度であることを予備的な調査で確認した。次に計測システムの開発については、磁場を利用した3次元位置計測装置(3 SPACE Fastrak)を購入し、姿勢計測をモニターできる管理ソフトを開発した。これは、Fastrakの複数のチャンネルから得られる3次元的な位置データとオイラー角データをリアルタイムにグラフ表示し、そのデータの保存と再生および磁場の乱れの確認などができるものである。最後に作業照度を変えた荷物運びモデル作業実験を行った。被験者は10名、作業照度は1・10・50・200ルクスの4種類、作業は重さ4.5kgの箱を繰り返し運ぶ作業とした。計測は磁場測定による位置データおよび主観的な作業のやり易さや手元の見えにくさなどである。その結果、作業照度が1ルクスでは自覚的には手元の見えにくさや作業のやりにくさおよび作業時間の延長など確認された。しかし50ルクス以上ではそのような問題点は全く認められなかった。
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