夜間の介助作業のように、不十分な照明環境下で作業をせざるを得ない状況での作業特性を明らかにするための研究を行った。成果の概要は以下の通りである。 1.まず、介護作業のように周囲に物が多い場合に作業空間における作業者の位置を記録するために、磁場による3次元位置計測装置の管理ソフトを開発した。 2.前述1の測定系を用い、まず荷物取り扱い作業における環境照明の影響を検討した。環境照度は1・10・40・150Lxの4種類とし、作業は高さの違う作業台の間で荷物を繰り返し運ぶ作業とした。その結果、環境照度が低下するほど作業時間が延長することおよび低い作業台での作業時に姿勢の変動が大きくなることが確認された。主観的な作業の困難性については1Lxでは困難な経口が明らかであった。負担感については、肉体的な負担感の変化はそれほど明確でなく、むしろ精神的な緊張感の増強が明確であった。 3.人介助作業における環境照度の影響を検討した。作業照度は1・10・40・400Lxの4種類、人の介助は、ベッドから車椅子に抱きかかえて移乗させる作業とした。その結果、移乗の前準備では環境照度が不十分なほどベッドから離れて全体を見渡しながら作業をする傾向があること、移乗では環境照度による差は認められないこと、移乗の後始末では環境照度が不十分なほど足下に顔を近づけて作業する傾向があることなどが認められた。主観的な負担感については、精神的な緊張感や足もとの見えにくさを暗いほど感じる傾向が強かった。肉体的な負担感については明らかな差は認められなかった。
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