研究概要 |
α-グルコシダーゼ阻害剤(AcarboseとVoglovose)による肝cytochrome P450(CYP)の誘導および化学物質に対する感受性の変化について検討した。まず、Acarboseを粉末食に混じて(0,20,40,80mg/100g diet)、ラットに投与した。同時に、半数のラットに水道水、残りの半数は10%のエタノール水溶液を飲料水として与えた。3週間投与した後、一部のラットを屠殺し、肝ミクロソーム蛋白、CYP、CYP2E1を定量した。残りのラットに0.50g/kgの四塩化炭素(CCl_4、経口)あるいは0.75g/kgのacetaminophen(AP、腹腔内)を投与し、24時間後に血漿のALTとASTの活性および肝GSH含有量を測定した。その結果、3週間のAcarbose(40,80mg/100g diet)投与によってCYP、CYP2E1の量或いは活性(DMN)が増え、エタノールとAcarboseを混合投与した場合、CYP、CYP2E1がさらに上昇した。また、CCl_4あるいはAPを単独投与した場合でも、血漿のALTとASTの活性が上昇したが、Acarboseの前処理によって、血漿のALTとASTの活性がさらに上昇した。また、エタノールとAcarboseを混合投与したラットにCCl_4あるいはAPを与えると、ALTとASTの活性はより著しく上昇した。Voglivoseについて、類似した実験を行った結果、Voglivose(5.0,10.0mg/100g diet、3週間)による酵素誘導がCCl_4(0.50g/kg)の肝毒性を増強した。本研究の結果、α-グルコシダーゼ阻害剤による酵素誘導が化学物質の肝毒性の増強をもたらし、エタノールの混合投与がその酵素誘導と肝毒性の増強作用をさらに強めることが示された。
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