本研究は、HCV抗体陽性率の高い長野県A町B地区及びC地区をモデル地区として、HCV感染者の肝炎発症予防としての飲酒・労働を中心とした生活管理指導を行い、その評価と、HCV感染者の肝機能を悪化させる飲酒、労働の影響を再確認し、HCVキャリアの肝炎進展防止のための健康管理システムを確立することを目的とし、以下の3点の結果を得た。 1)過去13年間の死亡原因を分析した結果、対象地域の肝ガン、肝硬変は増加傾向にあり、最近3年間の死亡原因の約3割が肝癌・肝硬変であった。特に、女性の肝癌・肝硬変死亡は男性より多く、その平均死亡年齢は男性より低かった。 2)HCV抗体陽性者の肝機能値について、10年間の経年変化を観察した結果から、HCV抗体陽性で10年前肝機能値が高い群でも飲酒習慣の程度が少なかった人は肝機能値が安定方向に推移し、現在は10年前より有意に低い値を示した。しかし継続した飲酒習慣者は肝機能値の変動が大きく不安定なままであった。 3)HCV抗体陽性者の労働強度と肝機能の関係は、HCV抗体陽性者では労働強度重度群の肝機能値は軽度群より高い価であった。この結果はHCV感染者においては過度の労働は肝機能の悪化を促進させる可能性を示していた。
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