本研究では、地域の一般住民中の不安障害の有病率、人工統計学的分布、主要な出来事との関連、疾患に伴う社会生活上の困難および身体疾患に及ぼす影響、さらに受診行動のパターンを明らかにするために、岐阜県G市(人口約40万人)の20歳以上住民(約34万名)から2千名を無作為に抽出し、訓練を受けた面接員が訪問面接調査を実施した。面接には、WHO統合国際診断面接法(CIDI)1.1版のミシガン大学修正版(UM-CIDI)日本語版から、パニック傷害および全般性不安障害のセクションを使用した。CIDIの面接結果からICD10診断基準に基づいたそれぞれの不安障害の診断を行なった。2012名に調査への参加を依頼し、1031名から回答を得た。調査時点で死亡、転居、病院など施設に入所などの者を除いた対象車に対する回答率は57%であった。全般性不安障害の生涯有病率(経験率)は2.3%、6ヶ月有病率は1.1%であった。パニック障害の生涯有病率(経験率)は0.5%、6ヶ月有病率は0.2%であった。全般性不安障害の男女比はほぼ1で、若年者と高齢者に多かった。1963年以後生まれの出生コホートで累積罹患率が増加していた。子供時代の両親からの虐待、離婚、心臓病の既往歴が全般性不安障害の危険度と有意に関連していた。全般性不安障害を過去に経験した者では1年間の休業日数が経験のない者の3倍多かった。全般性不安障害の経験者のうち精神科医を受診した者は26%、一般医のみを受診した者は17%、医療機関を受診しなかった者は67%であった。また服薬した者は33%であった。以上の結果から、全般性不安障害がわが国の一般住民でうつ病についで多い精神障害であり、軽快後も社会生活に支障が残ることが判明した。全般性不安障害の予防および早期発見のために、一般住民に対する啓発・広報による気づきと受診勧奨、虐待経験者、離婚者や心臓病患者などに対する心理的ケアが必要と考えられた。
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