研究概要 |
本年度で調査データの収集、血中インスリン、ホルモンの測定を終え、一般閉経後女性において血清エストロゲン値に関連する生活習慣は何か、インスリン抵抗性はこの関連の交絡または修飾因子であるかという課題について解析をおこなった。生活習慣に関する情報は婚姻状態、体格、喫煙、飲酒、栄養摂取、運動、月経・生殖歴等で、栄養摂取は169項目を含む食物摂取頻度調査票を用い26主要栄養素の摂取量を推定した。また植物エストロゲンを含む大豆製品にも注目し、その総摂取量、イソフラポン摂取量も推定をおこなった。解析対象者は乳癌、卵巣癌、糖尿病、甲状腺疾患等の内分泌疾患およびホルモン補充療法使用者を除く閉経後女性88名である。空腹時インスリン値とHOMA-Rをインスリン抵抗性の指標として用い、これらの指標と血清エストラジオール(E2)、性ホルモン結合グロブリン(SHBG)について生活習慣の各因子との年齢補正後相関係数を計算した。この結果、生物活性の高いE2を表すと考えられるE2/SHBG比が肥満指数(BMI)と統計的に有意に高い相関係数(r=0.30)が認められた。空腹時インスリン値、HOMA-RもはBMIと有意に高い相関係数を示した(r=0.45,r=0.43)。E2/SHBG比とBMIとの相関は空腹時インスリン値またはHOMA-Rで補正後、値は低くなるものの統計的に有意であった(r=0.21)。空腹時インスリン値およびHOMA-RとBMIの相関もE2/SHBG比で補正後も有意に高かった(r=0.40,r=0.38)。他の生活習慣に関する因子、イソフラボン摂取等はE2/SHBG比およびインスリン抵抗性と有意な相関を示さなかった。これらの結果より、肥満の乳癌リスクへの影響はエストロゲン代謝、インスリン抵抗性の両者が関与するものであることが示唆された。
|