研究概要 |
研究者らはホルモン作用が疑われる環境汚染物質の生体影響について分子生物学的アプローチを行ってきた.今年度は,重金属カドミウムについて検討した.カドミウムは強い毒性を持つ環境汚染物質であり,暴露により体内の防御蛋白,修復蛋白およびsignal transduction pathwayに関与する遺伝子の発現を変動させることが知られるようになったが,また近年には,エストロゲン受容体(α型)mRNAの発現に影響を与えたという報告もあり,内分泌撹乱物質としての作用も疑われる様になった.しかし,未だその作用機転は定かではない.我々は,カドミウムのエストロゲン受容体に対する作用機転を明かにするために、カドミウム曝露によって変動する遺伝子転写産物をスクリーニングし、関連遺伝子の転写産物を同定し,その消長を経時的に追跡して,細胞特異的反応機構を解明することを目的に研究を行った. 現在のところ,カドミウム暴露COS-7細胞(CdCl_2I0^<-7>M,6hr)を用いたsubtractive suppressivehybridization(SSH)法によりzeta-crystalline,cytochrome C oxidase subunitIV,glutathione synthetase,serine/threonine protein kinase,hcat shock protein 10,transducin beta-1 subunit,tunp,IImRNAを検出して,Northern analysisやreverse Northern dot blot analysisにてその発現増加を確認した.まだカドミウムのホルモン撹乱様作用と関係が疑われる遺伝子の発現が見つかっていないが,今後の研究として,これら遺伝子産物のカドミウムによる発現機序を詳しく検討するとともに,カドミウムのホルモン撹乱様作用と関連が疑われる遺伝子の検出を続ける予定である.
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