研究概要 |
1. 1988年に、福岡県久山町の成人検診で75g経口糖負荷試験を受けた満40-79歳の住民のうち腎不全のない2476名を対象として、腎機能の指標であるl/血清クレアチニン(Cr)値と血清インスリン値(空腹時+2時間値)の関係を検討した。年齢調整後の偏相関の検討では、血清インスリン値は男女で血圧値、血清コレステロール、LDL-コレステロール、中性脂肪、BMIとともにl/Crと有意に相関した。さらに男性では、HDL-コレステロール、飲酒・喫煙が1/Crと負の相関を示した。重回帰分析において他の関連因子を調整しても、血清インスリン値は1/Crの有意な関連因子となった。以上より、一般住民において高インスリン血症は腎機能の有意な関連因子であることが示唆された。 2. 久山町の地域一般住民中の正常耐糖能者を前向きに追跡し、インスリン抵抗性の指標としての耐糖能異常の発症に及ぼす食事性因子の影響について検討した。 1988年の成人検診において、75g経口糖負荷試験によって正常耐糖能と判定された満40-79歳の久山町住民のうち、1993-94年の検診で再度糖負荷試験を受けた1080名を対象とした。追跡開始時と終了時に栄養調査を行い、追跡終了時に正常耐糖能のままであった群(N群)と糖尿病(WHO基準,1985年)あるいはimpaired glucose toleranceを発症した群(I群)との間で食事性因子を比較した。その結果、追跡開始時の栄養素等摂取量の比較では、I群はN群より男性のアルコール摂取量が有意に多く、女性のP/S比が高かった。しかし,女性のI群ではN群に比べて追跡期間中の動物性脂肪および飽和脂肪酸の摂取量が有意に増加し、P/S比が減少した。多変量解析では、男性で追跡開始時の飲酒が、女性で追跡期間中の飽和脂肪酸摂取量の増加が、非食事性因子と狐立して耐糖能異常発症の有意な危険因子となった。
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